透過の雨/ホロウ・シカエルボク
 
なら歌うかもしれないけれど

互い違いの歌のことを思い出す
遠い冬の話さ
意地を張っていたんだ
自分がろくでなしじゃないって思ってるふりをしてた
互い違いの歌をうたいながら
いつも違うものを手に入れようとしてた
いくつかは早々と
手中に収めたような気になって
だけど靴を買い替えることさえままならなかった
古い靴は脱ぎ捨てられて
爪先の辺りのゴムは
暑さで垂れた犬の舌みたいに
だらんと
剥がれ落ちようとしていた
なにもかも、どんなものだって
壊れ始めた瞬間に煩わしいものになる
どんなに大事にしていたものだって
どんなに通い合っていた心だって

仕事場の近くの
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