詩の日めくり 二〇二〇年九月一日─三十一日/田中宏輔
 
公が愛した女性もまた別の共生生物に身体を支配されていたというもの。

 9作目は、エドワード・ブライアントの「コルファックス・アヴェニュー」6ページほどの短い作品だ。ヒッチハイクしている少女を、車に乗った二人の男が殺す話だ。殺すシーンは残虐でもなんでもない。男のひとりが、しきりと腹が減った。ハンバーガーが食べたいと言うのがユーモアと言えばユーモアか。

 10作目は、ロバート・R・マキャモンの「水の底」プールで息子が死んだのだが、それが水のなかにいる化け物のせいだと気がついた父親が敵を討つというもの。単純な物語だが描写が確かで、すぐれていた。

 塩田良平さんが明治書院から出された『文
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