蝶を咥えた猫/ただのみきや
 
汀にうすめられ
光を抱いて空はまどろみを取りもどす


霧雨に鳥を追い
瞳が深まるにつれ
わたしを離れた
狐の吐息で
稲光と雷鳴の間の
飢えた肌へ
雨はささやいた


 うつむいた時計から芍薬の滴り
縫い閉じられた沈黙のほつれた糸


雨音がついばむ放心
わたしは輪郭を失って
遠くの耳に吸い込まれる
樹々を伴って風が羽ばたいた


言葉を蝕する
 こころの影


慣用句を着せられた少女が紅の糸を首に巻いて
グラウンドのまん中で空を見上げている
鏡との距離を測りかねた盲目の物差しを
祈りと嘯く者たちに倒れかかる剣になりたいと
冷たいぬかる
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