詩の日めくり 二〇二〇年六月一日─三十一日/田中宏輔
ものは忘れちゃうのにね。
いま、えいちゃんの経営している焼き鳥屋の日知庵の従業員をしているのだけれど、ときどき、学校の講師時代のことや塾の先生のときのことや学生時代の学生だったときの記憶がよみがえって、夜中にうとうとしてたら、1分から数分近く、授業の準備をしなきゃとか、朝に起きたときに、授業に出るために準備しなきゃと思うことがあって、これはボケのはじまりかなって、怖くなることがある。親は両方とも死んでいるのだけれど、生きているとして考えてるときもあったりして、これまたボケのはじまりかなって感じることもある。記憶に関することだけれど、怖いことだ。
二〇二〇年六月八日 「神鯨」
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