リアリストアリスの天国の肖像 その断面から/ただのみきや
りとした時間の裏
ホチキスを握った無数の手が作業に明け暮れる
イソギンチャクの林を黒い転寝が通過すると
涙腺の遺跡からは次々と慣用句がこぼれ落ちる
托卵をくり返す図鑑の魚はもはや乾物だ
水溶性の祈りの油膜から活火山でもある
一つの氷山が海を孕ませることもなく激しく勃起した
太陽を信奉するミミズたちの飢えた耳の集合体
ねばついた光に逆らってまばたきは加速する
一輪の蒲公英の茶話会から突き出した二本の足
まばたきと呼吸の度に崩れてゆく
肖像の魂を見つけられずに足の爪を噛む
子どもたちは雨の囁きにそそのかされて一段と肥えた
だが置き場のない一輪挿しを宙に回転させて
裸足で逃げ
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