リアリストアリスの天国の肖像 その断面から/ただのみきや
く死者のたましい
噛んだら キュッと鳴って
深い悲しみの 開く幸福
袱紗
包む 大切なものを
たしかに大切と思えた何かを包んだのだ
だが袱紗の中には何もなかった
あったのは 大切と思う心だけ
*
ひとつの絵はひとつの箱
ひとつの箱は一枚の袱紗
一枚の袱紗は一編の詩
一編の詩はわたしの心
心は空白との境を失くしている
性癖
白いパウダー状の声で空気が歌っている
二羽の蝶を鈴のように振りながら
おしゃべりを禁じられた賭け金が
火の栞となって海のどこかで記憶を失くす
義足の犬が掘り返すのっぺりと
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