リアリストアリスの天国の肖像 その断面から/ただのみきや
床と同じくらい冷たくなった
自分の肉体と抱き合っていた
カーテンで朝を拒みながら
なにも学ばなかった
人形の首には紅いタイ
画面に額を当てて時代の体温を見る
過去と未来が復讐者だった
空白しか訪ねて来ない椅子よ
瞳から溢れた景色を食んで
黒い虫が動き回る
なにも見えず ないも知らない
生まれた時から殺された兎
虚空に吊られた裸体
髪が抜けるように記憶が抜け落ちる
母のように その母のように
静かに摩耗してこぼす言葉もなく
内臓に刺青しながら生を磨り潰す
五月の華やぐ景色の羽衣
秘密がひとつ干されていた
白粉くさい袱紗に包まれて
微かに蠢く死
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