ホオジロと会話した朝/山人
 
をつまみ、口中に投入し、味と食感を探り咀嚼するという行為の中で、決していい加減なものは提供できないという多少のプライドはある。
 連休中、当宿に見合わない客が来た。若い夫婦と一歳児。当然アウトドア系の客ではないが、目的を聞くことは憚れた。来訪時に妻が対応したのだが、勝手に若夫婦の旦那がその目的を告白した。近くの駅の二階が蕎麦の名店であり、そこを訪れるには朝七時の予約が必要なのだという。関東方面から来たこの夫婦は一枚のざるそばの為にわざわざ民宿に泊まったのである。その蕎麦店と私との関係は過去に多々あった。あったというのは私固有のイメージでしかないのであるが、とりあえず多くを語りたくはない、という経
[次のページ]
戻る   Point(3)