詩の日めくり 二〇二〇年四月一日─三十一日/田中宏輔
 
ひに寓でやすらふ

ゆうぐれの鐘の鳴る丘わたくしはけふ逝くひとの数知るだらう

あおによし答はすでにできてゐる残されたのは質問だけだ

心とふおそろしきもの棲まふらしからだの奥処(おくど)の夜見の国かな

秋日和 なにもいれずにふたをするだつてこんなにきれいな容器

霊長類飛びそこなつたそのわけは神の指揮棒ほんのひとふり

この町のどこに錨をおろさうか。事件はしばし思案するらし

恋人達もミルクポットも文鳥も写真のなかの確かな静物

もういちどもういちどだけふりかへる あやまたず見よ四方(よも)に散る花

おやくそく。十指あまねくほどかれて私が私を忘
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