詩の日めくり 二〇二〇年四月一日─三十一日/田中宏輔
笹原玉子さんから、歌集『偶然、この官能的な』を送っていただいた。笹原さんの歌は、一首が一つの小説ほど内容があって、ものすごいものだと思っている。いまパッとページを開けてさいしょの歌を読んでもそう思った。こんなのだ。
「掛け算は好きですよ、わけてもゼロは」嵐の夜の客人と話がはずむ
いいと思った歌を拾っていこうかな。
かんむりも無冠も然なり彼(か)の国の巫女のお告げは取換えごつこ
そのかみに日本列島ありました謎の言の葉「ただいま」「おかへり」
八月の神の眼窩のやうなはらつぱぺんぺん草でいつぱいの
癒えぬうちまた瑕負ふるパレスチナ受肉ひそかに育ちつ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(16)