砂金採り/ただのみきや
 
過ぎてゆく





風香る

風香る五月
血と硝煙を嗅ぐ
ここにあってここにはない
近くて遠い国
かつて注ぎ出す血には価値があった
神をなだめるため
豊穣をもたらすため
天地の和解と安定のため
いまはただばらまかれる
無価値で無意味なもののように
血は寡黙だ
インクのようにおしゃべりしない
その赤々とした命の流出は
夜のようになって
夢のように消えてゆく
残された者の心にだけ
黒くこびりついて二度と落ちない
乾くことのない影
風香る五月
血と硝煙を嗅ぐ





雲雀鳴く

そろそろかと思いつつ
今ひばりの声を聞
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