砂金採り/ただのみきや
 
視力の衰えからか
見定めようとすればするほど
景色は曖昧になる
モネの絵を想う
睡蓮の多くは風が凪いだ一瞬のようで
日傘の女は風が吹いた一瞬のようだ

生老死の一瞬の凝縮に
言葉はてんで追いつけない
後からしたり顔
事物そのものみたいに振舞うだけ





時間だけが

どこをほっつき歩いていたか
時間だけが過ぎている
アルバム一枚分の音楽が終わり
沈黙がミシミシ言っている
また別のアルバムをかけて
サイコロ握るように言葉を握り
こぼれる砂で模様を描く
光の底
群れ泳ぐ風の
段差のない濃淡
どこをほっつき歩いているのか
時間だけが過ぎ
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