砂金採り/ただのみきや
の野の秘めごと
石を嘔吐する雲の影を生まない樹の
歌われない歌のため
衣裳(いしょう)狂いが止められない
*
ああ五月
かつて恥じらいの蕾もふくらんだ五月よ
哭いて笑って
傷口が笑った
空き缶が潰れるように
一個のレモンが投下され
太陽と海は溶け混じる
言葉から遺棄された
死体で賑わう朝
突き刺さるかもめの歌
絵と言葉
咲いたばかりの桜を追いたてて
大きくて太い風が寄せて来た
晴れてはいてもどこか暗い光
色は濃いが夢のような質感で
芝草が震えている
視力
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