砂金採り/ただのみきや
めながら
眼が闇を穿つ
狭い穴から
女の素肌が見えた
そこには過去の全ての夢に出入りできる
詳細な地図が書かれていた
だがどこを穿っても断片にすぎず
全体像は見えてこない
片言を繰り返す小鳥のように
文字はただの模様に変わる
カーテンの向こうを窺(うかが)っていると
五月に後ろから刺された
ふり返ったわたしの顔に書いてあったものを
わたしが読めるわけもなく
液化してゆく女を冷凍庫に閉じ込める
鳥が降る静かな板の間で運命の
表象のような何かを
獅子頭のように踊らせるのはわたしの
皮を被ったわたし
愉快な皮被りは悲劇を好み
銀の耳の咲く死者の野
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