詩の日めくり 二〇二〇年三月一日─三十一日/田中宏輔
 
ばに「丸物デパート」というのがあって、親によく連れて行ってもらった。今のビッグカメラのところだろうか。最上階の食堂でお子様ランチを食べるのが定番だった。ある日、ウェイトレスさんが飲み物や料理の皿を載せた盆を持ったまま食堂の中央でこけて血まみれになったことがある。救急車まできて、大騒ぎだった。それ以来、ぼくは丸物に行くのが怖かったのだが、後年、大人になって母親に尋ねたら、そんなことは一度もなかったという。ぼくの偽の記憶はなんだったんだろう。謎だ。


二〇二〇年三月二十二日 「お使いが嫌だった」


 そういえば、祇園に住んでたとき、古川町の商店街によく買い物に行かされたのだが、お使いが
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