詩の日めくり 二〇二〇年三月一日─三十一日/田中宏輔
 
胸の前に槍を構えたり、心臓の前に胸当をつけたりしないよ。友を信じている者は無防備なんだよ。
(テア・フォン・ハルボウ『メトロポリス』12、前川道介訳)


二〇二〇年三月十七日 「建仁寺」


 幼いときには建仁寺が遊び場だった。といっても小学生低学年くらいまでだったと思うが。池ではザリガニ捕りをしたり、児童公園では紙芝居をよく見ていた。紙芝居のおじさんが売っていた水あめやせんべいを梅の味のするものに挟んだやつとか、あと型抜きというのもあったかな。型抜きはできたら、またもう一回やらせてもらえるという話だったけど、あるいは景品がつくという話だったけど、いつも失敗して、成功したことが一度
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