詩の日めくり 二〇二〇年三月一日─三十一日/田中宏輔
ん。それは別離の教訓をよみがえらせてくれる。冬の肉体の魔法を思いださせてくれる。融合と非融合。おまけにそれは春の恐ろしい欲望に対する免疫までこしらえてくれる。」
これだけの言葉を一気にまくしたてた彼女は、いまにも減圧で破裂しそうだった。
「ぼくは哲学者じゃないですから」
「哲学は舌の先にあるのよ。それと、腰のくびれや、耳のうしろや、両脚が胴体とつながる部分や、太腿の内側や、膝のうしろや、山の頂上や、谷間に。非武装地帯に」
(ハーヴェイ・ジェイコブズ『グラックの卵』朝倉久志訳)
二〇二〇年三月十六日 「断章」
友人というものは友人に対して、いつだって武器をもたず、胸の
[次のページ]
戻る 編 削 Point(13)