詩の日めくり 二〇二〇年三月一日─三十一日/田中宏輔
んだ本のなかで、もっとも読みにくかったものだ。固有名詞の渦に飲み込まれながら読んだ。苦痛だったが、中断したくはなかった。上下二段組の600ページの大冊であった。おもしろかったかと聞かれれば、おもしろかったと答えるかもしれない。
二〇二〇年三月十五日 「断章」
「ぼくは親密な関係が好きです」
「好きでない人がいる? それが好きでない人がどこかにいる? でも、Rの字のつく月には、所有をともなわない愛のことを語りたくなる。それが人間関係でいちばん苦痛な種類なの。短期滞在渡り鳥歓迎。刺激的で、かつ腹立たしい。最終的行為だけど、所有はしない。まあ、ひとつの教訓だと思ってよ、ノースさん。
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