この春は地獄からやって来た/ただのみきや
 
イラを乗せているじゃないか
干乾びた力のない指で袖を引くもの
むしろ腹話術の人形は理性を着こなした大人の方ではなかったか
幼心の甘く饐えたにおいが今
中華鍋を振る音と青椒肉絲に消されてゆく
渦巻く蟻の群れ 紋様とリズム
軽やかに紫色の指を鳴らしながら
肝臓は翼を得て大空へ舞い上る

微睡みを活けた頭蓋を一つへその上に乗せて
ラッコのように午後の光にたゆたう者
きみが指さすものが次々消えて行くことに
何ら疑問も持たずタトゥーを入れ続けるといい
美しい呪縛のような一編の詩を絞首刑にして





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開いたばかりの木蓮をゆらす風に頬
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