この春は地獄からやって来た/ただのみきや
掛け声を揃えて亀甲縛りにした憲法9条で
時代の凱旋門に翻る微笑みの処女膜を破ろうとする
肥満の僧侶とプリマドールを演じた劇団員たちの
ポケットの中に広がる青空の神経剤(ノビチョク)
ああパントマイムパントマイム落下する蝙蝠たち
ハリエンジュに架かったまま自分の脳から何を食った
白紙に溺れる睫毛から這い出してくる裸の女の
未来まで埋め立てられた視界
平和の進軍ラッパに吸い込まれていった子供時代に
言葉の額縁の中に映っていたのは偶像のように澄まして
事実を省かれた自画像ではなかったのか
壊れた冷蔵庫を内側から叩く音
絡まった樹海を庵に編みながら本当は
膝の上に幼いミイラ
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