夜に煤けた歌の行方は/ホロウ・シカエルボク
 
ある、そしていままでの彼ら以上に俺は解答を持たない、それが美しいことだと思って生きてきた、ずっと…誰かの視線を感じて振り返ると、室外機の上に居た猫が路地の奥からこっちを見ていた、その視線は奇妙なくらい乾いていて―まるで一瞬でも俺達の間にある種の親密さが存在していたかのようだった、そうして猫がその目の奥から問いかけていた言葉はきっと、俺がさっき繰り返していた言葉とまるで同じだった、夜を泳げば泳ぐほど夜の明け方を知らない、世界は必ず隙を見て入れ替わる、いつの間にか、いつだっていつの間にか違う時間帯の中でまごついている、必ず取り残される爪先のアイデンティティ、だから人はオリジナリティーという名のフレーズ
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