夜に煤けた歌の行方は/ホロウ・シカエルボク
、物陰に居たカラスが驚いて飛び出す、あらゆる信号が点滅に切り替わる、もうどこで何を求めてもやすやすとは手に入らないのよ、そう優しく諭す母親のように、静かに語りかけている、失われた歌はこんな夜にどこへ行くのだろう、指先の温度を確かめながらまばらになった車の流れを見る、そんな歌はきっと俺の脳髄の中で同じフレーズを繰り返し続ける、軽過ぎる靴の底が時々どこを踏みしめているのか不安になる、マップアプリの矢印には絶対に示すことの出来ない―現在地、時々驚くほど強い風が一瞬だけ吹き抜ける、生温い匂いがする、明日は雨になるらしい…俺はこれからどこへ行こうとしている?これまでの誰かへの問いかけと同じだけの疑問符がある
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