平和主義者の丑の刻参り/ただのみきや
 
た視線だけが

抜け出せない残響が女たちの姿で
らせんの鍵盤を昇り降りしている
一つの石を枕に眠る男の夜空を穿つ
絶対零度 啓示の流星群
痴態の乱脈の半生を演じ切るための静脈注射

まばたきをしない落葉の大群に占拠されて
電波塔に残された投身者の透けた抜け殻を
指で弾く響きと天秤を分け合う
ひとつの水脈がいま羽毛のように燃えて

ガラス窓に張り付いた秘密の裸体は
なおも隠匿のための引き出しを少しだけ凹凸にし
無数のハンミョウが光線を混ぜ返す
音楽は仮面の通り魔

少女の髪飾りは地上に触れて馬になった
過去へと駆け出す二つの灯り
一匹の蛇が闇を捲り上げる

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