詩の日めくり 二〇一九年十三月一日─三十一日/田中宏輔
 
は、愛することであり、また、時たま愛の対象へ少しばかりおぼつかなくも近づいていく機会をとらえることなのである。
(トーマス・マン『トニオ・クレーゲル』高橋義孝訳)


二〇一九年十三月十一日 「断章」


「ねえ」と映話をすませたマルチーヌがいった。「なに考えてるの?」
「きみが愛するものは、生き生きしてるってこと」
「愛ってそういうものなんでしょ?」とマルチーヌはいった。
(フィリップ・K・ディック『凍った旅』浅倉久志訳)

愛は、不可欠なものであるばかりではなく、美しいものでもある。
(アリストテレス『ニコマコス倫理学』第八巻・第一章、加藤信朗訳)

美しい?

[次のページ]
戻る   Point(13)