詩の日めくり 二〇一九年十三月一日─三十一日/田中宏輔
 
ことだろう、
明白な瞬間をそのひとの内部にもち込みながら。
(リルケ『おお、わたしの友よ……』高安国世訳)

人は一つの微笑、一つのまなざし、一つの肩のために恋をする。
(プルースト『失われた時を求めて』第六篇・逃げさる女、井上究一郎訳)
 
 おまえはいつも愚かな頭のなかで、ありもしない人間の間の絆を実在するかのように考えてしまうらしいな。それがおまえのすべての不幸のもとなんだ。
(マルキ・ド・サド『新ジェスティーヌ』澁澤龍彦訳)


二〇一九年十三月十四日 「断章」


 不幸な愛という言い方があるが、これは歪んだ表現である。片想いの愛は、愛する人を不幸にするけれど
[次のページ]
戻る   Point(13)