母はフェニックス/壮佑
 
親の回腸で再び卵となり、終いに肛門から出て来ることによってのみ薄められる。

チャンネル桜の3時間討論で検討されていた母親とは、実は私の母のことである。私はけさ母の肛門からひり出されたが、行方不明の卵を想って深い悲しみの淵を彷徨っていた母は、再び眼にした卵を手に取って涙を流し、その涙が卵の上に一滴落ちた拍子にピリリと割れた殻の中から、私がひょいと顔を出したものだから、母の悲しみはいや増しこそすれ癒されることはさらさらなかった。私もそんな母の様子を見るにつけ、貰い泣きの涙が溢れたものだが、母には私の涙の意味など分かろう筈もなく、突然、ほうっ! とひと声鳴いたかと思うと翼を広げて飛び立とうとする。
[次のページ]
戻る   Point(5)