母はフェニックス/壮佑
 
る。しかし母の退化した翼で空など飛べる筈もなく、ひとしきりそのあたりをドタバタ右往左往した挙句、立て付けの悪い襖と柱との隙間に無理やり首を突っ込んでこじ開けようとする。しかし襖はガタと音を立てたきり動かなくなり、そのまま首が抜けなくなってしまった。

文化人放送局2のワンセッションが終わるまでの間も母はバタバタ暴れていたが、襖は押しても引いてもびくともしない。私は自分が卵であったことの記憶にムカデの足が生えて逃げて行くのを阻止するため、部屋を密閉しようと襖を思いっ切り強く閉めた。ビシャン! ちらと母の首のことが脳裏を掠めたが、そのようなことを思い煩っている場合ではなかった。ことは私の多元主義的
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