はぐれものの夜/ホロウ・シカエルボク
 
あれ変化は歓迎すべき事象だ、人が無意識に人生や真実に制限を設けるのは、その夥しい物量と圧力に本能的に恐怖するからさ、強靭な精神を持っていなければ、その中に飛び込んで現在地を確かめるのは至難の業だからだ―だけど、そうだろう、知るべき音は、言葉は、あらゆるインスピレーションの根源は、そうしたうねりの中に居なければ始めることすら出来ないはずさ、はぐれものの夜は押し黙り混濁する日常に沈み込むために訪れる、見るための、聞くための、感じるための時間、まことしやかに語られる真実など詭弁に過ぎない、血流の速度で進化するセンテンスが眼球を血走らせる欲望の正体だ、生命は簡単に思考を置き去りにすることが出来る、一度きり
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