詩の日めくり 二〇一九年十二月一日─三十一日/田中宏輔
 
買う。レシートに買っていない大根の金額が。死ね。


二〇一九年十二月二十三日 「死を裏返して生きる。」


 死を裏返して生きる。みんながしていることだ。札の死を裏返して生きている。表を向いている顔を裏返して生きている。表を向いている葉っぱを裏返して生きている。表を向いている言葉を裏返して、みんな生きている。だから生はわかりやすいし単純だ。だれもが、死を裏返して生きている。或いはその逆。


二〇一九年十二月二十四日 「やわらかいドアノブ」


 やわらかいドアノブ。握ると硬くなる。冷たい兎。首をねじって息を吹き込む。とたんに熱を帯び、血液がめぐる。まるでドアノブのように
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