バウンドの世代/ホロウ・シカエルボク
 
デジタル時計の方がずっと命を感じさせる、堤防の向こうの砂浜には不時着した誰かがいままさに力尽きようとしている、彼の記憶はいつか波がすべてさらって行ってしまう、黄色過ぎる月は馬鹿でかい生きものがこちらを覗いているような気分にさせる、僕らはイギリスのバンドの曲ばかりを選んで歌いながら、心肺機能が限界を迎えるまで堤防沿いを疾走する、すれ違う車、すれ違う人間、すれ違う野良犬、すれ違う夜、そのどれとも僕らは交わらない、交わろうとしても交われるものではない、息が上がる、でも苦しさの中、呼吸が確かにそこに存在しているのだと感じることが出来る、動脈瘤の世界で命が明滅を繰り返す、生まれ落ちた瞬間、最初に目にしたもの
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