寺山修司フェア(ハルキ文庫)/藤原 実
 
します。それはまさに寺山修司も一貫して問題提起しつづけたことでした。

さらに近代演劇が大衆と舞台を切り離して<純粋観客>を作りだし、リアリズムで限定された舞台空間にすべてのできごとを閉じこめてしまっているのに対して、かつての能の舞台が一枚のムシロを敷いただけで村全体を集約的に象徴させていたというような指摘は、そのまま寺山の演劇論にこだましているようにも思います。

寺山修司というと前衛的でとっぴな発想の仕事をしたひとというイメージがあるでしょうが、じつは古典的世界と密接につながっていたりするのだなあ、と今回あらためて思ったのでした。

『古典と現代文学』は読売文学賞受賞。「詩の自覚の
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