寺山修司フェア(ハルキ文庫)/藤原 実
(「詩の自覚の歴史」)
五・七・五詩型として方法的に精密化すればするほど、芭蕉の発句が包蔵したカオス(私は比喩的に言うのだが)からは遠ざかってしまうのである。このことは今日の俳句や短歌について言えるばかりでなく、詩についても言えるのだと思っている。共同社会の法則から解き放たれ、もっぱら作者個人のその場その場の感情や心理や、あるいは思想にしか詩の動機を持たないようになったとき、すなわち孤独の心の告白としてしか意味を持たなくなったとき、それらの詩は避けることのできない一つの症状を露呈する。この世界とその住人たちとをことごとく否認し、詩は人間社会に奉仕することをやめ、象牙の塔に
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