寺山修司フェア(ハルキ文庫)/藤原 実
 
寺山の中学時代の作品です。
若いころには『オレは「昭和の啄木」と呼ばれてる』と故郷の友人にみずから語ったこともあるそうです。

そういう意味で巻末の小林恭二氏の解説(「反歌作家としての啄木そして寺山」)が興味深いものでした。
啄木と寺山の作品に共通してある、短歌としては自立していないような、つまり一首のワクからはあふれだしておさまりきっていないような「過剰な物語性」を啄木や寺山の個人の資質としてみるのではなく、短歌や俳句が一文芸ジャンルとして確立する以前の日本文学の流れ、つまり連句という物語の発端としての「発句」、長歌というテキストのダイジェストとしての「反歌」という、じつは今も日本文学の
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