vagabond/ホロウ・シカエルボク
 
な、精神病院に入ってるもうひとりの弟からは時々電話がある、なかなか出ることが出来ないけどね、あいつときたらいつだって仕事中にかけてくるんだ、鍵の掛かる階の、ロビーに置いてある公衆電話からね、自分の、些細な記憶が本当にあったことなのかどうか、確かめるためだけにね、そうして確認が終わるとすぐに切っちまう、その戦いの本質は俺には理解出来ることはない、俺はこんな文章の中にすべてを継ぎ込むことが出来るから、俺はこうすることでいつだって人生をクリアーにしてきたのさ、そう、社会規律やなんかばかりを鵜呑みにして踊る道化にならないためにね、あれは十四くらいのころだったかな、俺にははっきりと見えたんだ、生きているやつ
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