vagabond/ホロウ・シカエルボク
やつと生かされているやつの違いがね、神の啓示のようにはっきりと見えたのさ、だから、十四歳で死んでしまう連中の気持ちがよく判るんだ、それは一見世界が、投げ出したくなるくらいつまらないものに思えるからね、だけど、俺には早くから言葉と、それからリズムがあった、それが望む形に連なった瞬間に、退屈を抜け出すことが出来ることに気付いていたのさ、頭蓋の内側を風が吹き抜けるような、スッキリした気分になることが出来たわけさ、それからきっと、覚えているよりもずっとたくさんの、下らないことや愉快なことを繰り返して、あっという間に歳をとったけれど、年齢が人間を変えることなんてないんだって俺にははっきり言えるよ、だって俺自身がそれを証明しているもの、俺は今だって二十歳の頃と同じ身体つきで歩いているのさ、歳を取ることは老いではない、それはそいつ自身を、より明確にしていく過程であるべきなんだ、見ろ、もうすぐ夜明けがやって来る、白い夜が終わる前に家に帰って、短い眠りを楽しもう、そして目が覚めたらコーヒーを注ぎ込んで、在るのか無いのか判らないものの為に脳味噌に火を入れるんだ。
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