vagabond/ホロウ・シカエルボク
ものたちにとっては時代なんてお構いなしなんだ、ダイナーに潜り込んでホット・コーヒーを飲み干す間だけすべてを忘れた、ダイナーの大きな窓は街の哀しみを語るみたいに曇っていた、そんな窓にこびりついた蒸気の一粒一粒を数えていると、ジョー・ストラマーの叫び声が耳の中でこだました、あいつの声はあいつの人生そのものだった、そんな風に歌えるやつなんて数えるくらいしかいないだろう、ボーカリストは音符の位置ばかり気にして声を出す意味を忘れてしまった、言葉の聞こえない、お行儀のいい音楽ばかりだ、コーヒーを飲み干してしまうと、温まったせいか睡魔が襲ってくる、店で眠るわけにはいかなかった、コインをテーブルに置いて店を後にす
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