振り上げた拳で自らを力いっぱい殴る人のために/ただのみきや
 
果て
狭い一角へと追い詰められる
すると朝は刑務官のように迎えに来て
透けた手で目隠しをする
そうして胡乱な刑が執行されて
昨日のわたしたちは空白の無辺の汀
諦めのピリオドを探したまま
何もないところで何かに躓いたふりをする
正式に死んで見せる
たった一人で守り続けて来た祭りの朝



 *

木洩れ日を指ではじく音
冷蔵庫で冷した剃刀の溺れる音

あなたの心の釦(ボタン)が一つはじけた音
離れ離れになる影が雨より先に零した涙の音

音は鏡の前に立ち
うっとりしながら消えてゆく

鏡は自分の真中に欹てながら
すべてを忘れてしまう



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