別れのために/ふるる
 
どのお給料で
ふんだんに与えられたのは流行りの
明るく悲しい歌だけだったという

壊れかけの街のスピーカーからはこんな歌

君はかわいそう、君は悲しい、
だから君は生きている

それからけっこうな年月が過ぎ
散り散りになった街の住民達は
相変わらず叶わない美しい夢を見ている
空飛ぶ自転車に乗りたいとか
月までの虹をかけたいとか
波の言葉をわかりたいとか
そういう類の

また街がやいやい言ってきたらこんなふうに返事をする
もう君は私たちなしで平気だろうと
むしろ私たちが君たちの自立をはばんだ
餌すら口元に置かないと食べなくなった蚕のように
それで街はすごすご
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