ボロボロの壁/ホロウ・シカエルボク
 
俺は入院患者の格好のまま、あのコテージの真ん中で突っ立っていた、左のこめかみになにか冷たい感触があった。あの医者、と俺は毒づいた、大丈夫だってそう言ったじゃないか?もう助からないと分っていた、身体はなにも自由にはならなかった。目は自然に目の前を壁を睨んでいた、ボロボロになって―そんなにボロボロだったなんて信じられないくらいボロボロになったコテージの壁を。指先にじっくりと力がかかった、ああ、おしまいか―せめてもう少しなにか手に入れたかったな、俺がすべてを諦めたその瞬間だった、突然強い力で誰かが俺から銃をもぎ取った。続いて銃声が聞こえ、誰かがどさりと倒れた。俺は血も凍る思いでゆっくりと振り返った。左目
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