ポケットには丸めた鼻紙だけのくせに/ただのみきや
 






死は前から

呪いが追って来る
今も後を付け回す
わたしは慌てずにゆっくり歩く
きみら呪いが追いつく前に
わたしの死がわたしを捕まえるから
久しく離れていた恋人を抱きすくめるように
死は未来から両腕を広げ素早く駆け寄って来る
そうわたしの死は前から来る
きみらは好きなだけ呪うといい
きみら禍がすでに背後から
この頭上めがけて放物線を描いていたとしても
それより早く死は未来から一発の弾丸となって
この的を撃ち抜き仕損じることはないだろう
気楽なものだ
目的なんて持たなければ
生はこれ日々散歩
死の出迎えを待つだけでいい
きみら禍々し
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