詩の日めくり 二〇一九年四月一日─三十一日/田中宏輔
 
あのひとは「ぼん」て言うんやけど。」「そうなんですか。でも、大谷さんが行けばいいじゃないですか?」「おれ、彼女いてるし、行けへんやろ。」「ええ! ぼくが行くんですか?」黒田くんの手のなかのチケットを取り上げて、ぼくが「DX東寺・招待券」という文字を確かめてから、黒田くんの手に戻して、「行ったらええんとちゃう? 黒田くん、行ったら、黒田くんの文学や哲学が深くなるで。裸で勝負してる人間を見るんや。きっと、黒田くんが大きくなるで。あそこも、こころもな。」「そうですか?」「そうや。」「じゃあ、もらっておきます。でも行かなくてもいいんですよね?」「そら好きなようにしたらええけどな。行ったら、黒田くんが深くな
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