泥棒する青空/ただのみきや
はないアクアリウムで顔を洗いながら
一編の詩が女の顔を数えてトランプカードたちを回想へまき散らす
だが男の足音から女の心音は徐々に遅れていく太陽が失明するまで
風と戯れるクイーンたちのコーラスが秘密の首をそっと絞めた
価値観というものを食べたことのない子どもたち
すり鉢状の食卓の底へ突き落とす両親たちの分厚い手の皮を
甲虫の一撃のように感じながら自分の中の何かが蝸牛へと
メタモルフォーゼするのを畝の種のように全身で聞いていた
靴下のように裏腹な言葉を履いてスポーツに励むことは
春を鬻ぐことと何も違わなかったし転がっているのは小銭ではなく
自分自身であって死者の擬音と同一のもはや
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