稜線/山人
 
も若さというものを感じさせた。その若さの痕跡の中に、六十半ばの男が入り込んでいく行為は何なのだろう。もしなにかトラブルが生じ、新聞沙汰にでもなれば、年寄の危険な単独冬山という罪人のようなレッテルが貼られるに違いない。どのみち、山での遭難や事故ではすべて肯定されず、マイナスイメージしかないのだ。
 スキー場跡の山頂まで一時間近くかかった。前日吹雪いたのか、その後の痕跡はかすかにわかる程度であった。ときおり、風のあんばいで踏み跡がわかるところは抜からず有り難かった。しかし、抜かるところでは大きくタイムロスし、この時点で目的の山頂まで行くことはできないであろうと思っていた。
 急登の後には、一旦中斜
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