詩の日めくり 二〇一九年三月一日─三十一日/田中宏輔
みると、もしも、詩というものが問いかけであるのだとしたら、根源的に、詩人のこころには、誘惑してやろう、唆してやろうという気持ちや、その言葉には、虚偽や欺瞞といったものが含まれているのではないか、とも思われた。
二〇一九年三月二十九日 「詩論」
凝固点降下という現象がある。純粋な物質に不純物を入れると、固体になる温度が下がるという現象である。純粋な物質だと結晶化するのに時間がかかるが、不純物を入れるとたちまち結晶化するという現象もある。人間の体験も、自己の体験をのみもとにして考えるよりも、他者の体験やものの見方といったものを合わせて考えたほうが、より迫真的なものとなったり、じっ
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