詩の日めくり 二〇一九年三月一日─三十一日/田中宏輔
 
じっくりと考えさせられるものとなることが多いように思われるのだが、その他者の体験やものの見方といったものに、映画や文学といった、あからさまな「つくりもの」を入れると、自己の人生がより生き生きとしたものに感じられるためには、自己の体験である、「真実のなかに」、自己の体験ではない「少しの虚偽が必要である」ということにならないだろうか。いや、もしかすると、「少しの」ではなく、自己の人生をより生き生きとしたものと感じるために、「たくさんの」虚偽を必要としている人間もいると思われる。その数もけっして少なくないような気がする。筆者もその一人であろう。頭のなかには、実在人物の名前よりも多くの、文学作品の登場人物
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