詩の日めくり 二〇一九年三月一日─三十一日/田中宏輔
 
」というもので、すると、狡猾な蛇は、「あなたがたは決して死ぬことはないでしょう。それを食べると、あなたがたの目が開け、神のように善悪を知る者となることを、神は知っておられるのです」と言ったのだが、けっきょく、イヴはその木の実を食べ、アダムにも食べさせたので、二人は善悪を知ることになったのである。このことは、人間の知恵というものが、唆しと誘惑、そして虚偽と欺瞞からはじまったということを教えてくれる。詩とは何かと考えることがあり、以前に、問いかけではないかと書いたことがあった。聖書のさいしょの問いかけが悪魔によって発せられたこと、そして、そのあとの虚偽と欺瞞に満ちたいにしえの蛇の言葉を思い起こしてみる
[次のページ]
戻る   Point(13)