詩の日めくり 二〇一九年三月一日─三十一日/田中宏輔
 
び降りてきたことを
あの三条白川の川の水は覚えているかもしれないね
ひとりの少年が顔を上気させて誇らしげに立ち去っていったことを
そして、もうひとりの少年が恨みにも似た羨望のまなざしで
鯉を抱えた少年の後ろ姿を見つめていたことを


二〇一九年三月二十四日 「俳句」


花ひらく さまには似ても にぎりつぺ

花ひらく さまに似たれど にぎりつぺ

花ひらく さまにも似たる にぎりつぺ

手から手へ 無情な水を こぼし合う

額寄せ 水こぼし合う 縁かな

椀の手に 無情な水を こぼし合う


二〇一九年三月二十五日 「年金の相談」

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