詩の日めくり 二〇一九年二月一日─三十一日/田中宏輔
 

首筋がよわかった

ときどき
きみは
噛んでくれって言ってた

ぼくは
きみを後ろから抱きしめて
きみの肩を噛んだ

ヘッセなら
それを存在の秘密と言うだろう

ぼくの指は
けっして書かなかった
愛していると

グラスの氷がぜんぶ溶けて
テーブルの上は水びたしになってしまった

いま、どうしてるんやろか
ぼくが30代で
エイジくんが京大の学生だったときのこと

どうして、人間は
わかれることができるんやろう
つらいのに

それとも
いっしょにいると
つらかったのかな

そうみたいやな

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