詩の日めくり 二〇一八年十二月一日─三十一日/田中宏輔
『行かなかった道』
黄葉の森の中で 道は二つに分かれていた
残念だが二つの道を行くことはできなかった
身一つの旅人ゆえ,しばらく立ち止まり
一方の道を 目の届くかぎり遠く
下生えの茂みに曲がっていくところまで見渡した.
それからもう一方の道を眺めた,同じように美しい,
あるいはもっとよい道なのだろう,
それは草深く まだ踏みつけられていなかったから.
だがそのことについていえば,実際は
どちらも同じ程に踏みならされていた,
しかもその朝は いずれもおなじように
黒く踏みあらされない木の葉でおおわれていた.
おお,わたしは はじめの道を,ま
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