詩の日めくり 二〇一八年十二月一日─三十一日/田中宏輔
 
びもまた、悲しみもまた。
藪のなかに潜んでいるものではなく
藪そのものが、ぼくのこころのなかで動き出すのが感じられた。
わたしは、わたしの思い出を食べ
わたしの両親を食べ
わたしの住んでいる街の人を食べ
わたしと出会ったすべての人間を食べ
わたしが通った学校を食べ
わたしが家族と行った海を食べ
わたしが友人と行った湖を食べ
わたしが河川敷で坐ったベンチを食べ
ベンチに坐って眺めた川を食べ
川の上空を飛んでいた鳥を食べ
空に浮かんだ雲を食べ
わたしの見た
聞いた
感じた
あらゆるすべてのものを食べた。
すべてのものは、まったく同
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